ビールとコロイド:濁りと風味への影響

ビールにおけるコロイドとは、液体中に分散した微細な粒子のことです。ビールは水、アルコール、糖類、タンパク質、ポリフェノールなど様々な成分を含む液体であり、これらの成分が凝集することでコロイドを形成し、ビールを濁らせる要因となります。

コロイドの主な構成要素は、タンパク質ポリフェノールです。麦芽等穀物由来のタンパク質や、ホップ由来のポリフェノールが、製造過程で結合し、濁りとして視認できる大きさの粒子となります。疎水度合いの高いテルペン類やチオール類といったアロマ成分は、これらコロイド側に移行しやすいと考えられます。

コロイドは、ビールの外観風味保存安定性に影響を与えます。

  • 外観: コロイドが多いとビールは濁って見えます。意図的に濁らせるHAZY IPAヴァイツェンベルジャンホワイトのようなビアスタイルも存在しますが、多くのビアスタイルでクリアな外観が伝統的に求められてきました。
  • 風味: コロイドは、マウスフィールへの影響、コクやボディへの寄与、香味成分を吸着して風味を変化させると考えられています。アロマ成分のコロイドへの吸着度合いによって、その揮発性を制御できる可能性があります。吸着を抑えることでグラス上の強い上立ちを、積極的に利用することで口中から鼻腔へ抜ける様な重心の低いアロマを表現できると考えられます。
  • 保存安定性: コロイドは、時間の経過とともに凝集・沈殿し、滓(おり)となることがあります。また、コロイドが酸化反応を促進し、ビールの劣化を早める可能性も指摘されています。

穀物の選定マッシング煮沸発酵熟成濾過、熟成といった一連のプロセスを通じて生成されるコロイドがコントロールされ、グラスに注がれるビールが表現されています。

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