モルトの色彩と官能特徴

モルト(麦芽)やモルト化されていない乾燥大麦製造時の加熱具合は、ビールの色彩、風味、そして口当たり等に影響します。モルトの色合いは、モルト製造時の加熱度合いによって淡色から黒色まで幅広く変化し、それに伴い生成される化合物も異なります。

モルト色彩の要因であるカラメル化反応およびメイラード反応によって生成される主な化合物群と特徴は以下の通りです。

  • メラノイジン:モルト由来の糖とアミノ酸が加熱により反応して生成される。ビールの色(琥珀色から褐色)の主要な要因であり、モルト、トースト、カラメル等の複雑な風味にも寄与する。
  • アルデヒドとケトン:甘み、ナッツ、トフィー、焦げ様の風味に寄与する。VDK(Vicinal Di Ketone)と称されるダイアセチル(ジアセチル。バター様、高濃度ではオフフレーバー)、2,3-ペンタンジオン(蜂蜜様の風味)等が含まれる。
  • フラノン類(例:フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール):複素環状化合物で、カラメル、ナッツ、焦げ様の風味に寄与する。
  • ピラジン類:特に焙煎(ロースト)工程のメイラード反応やストレッカー分解等によって生成される複素環状化合物で、ナッツやロースト様の風味に寄与する。

モルトの色彩(色強度単位L(Lovibond/ラヴィボンド)と特徴

  • 淡色カラメル(10-20L):カラピルス、クリスタルモルト等

比較的低温での加熱により低分子のアルデヒドやケトン類を有する。デキストリンの組成により麦汁のボディや泡持ちを向上させる。風味は比較的穏やかで、ほのかな甘味や蜂蜜様のニュアンス。

  • 中間色カラメル(40-60L):クリスタルモルト等

琥珀色から濃い琥珀色。メイラード反応やカラメル化反応が進行し、より複雑なアルデヒド、ケトン、そして少量のメラノイジンを有し、明瞭な甘味と、トフィーやキャラメル様の風味。

  • 濃色カラメル(80-120L):クリスタルモルト等

濃い琥珀色から淡い茶色。メラノイジン量が増加し、強い甘味とともに、濃厚なキャラメル、トフィー、ドライフルーツ(レーズン、プルーン)様の風味が現れ、わずかに焦げたようなニュアンス。

  • 暗色カラメル:チョコレートモルト等

茶色から濃い茶色、あるいは黒色を呈し、少量でもビールの官能特性に影響する。メラノイジンの含有量が高く、ヘテロ環状化合物等も有し、濃いドライフルーツ、焦げた砂糖、コーヒー、チョコレート様の風味。

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