チーズの種類と発酵方法

チーズ製造は牛乳等の原料乳を乳酸菌やその他の微生物による発酵を利用します。発酵は、チーズの凝固、風味、食感、保存性に不可欠な役割を果たしています。チーズの分類は多岐に渡りますが、以下は乳酸菌を利用した製造方法にフォーカスします。

  1. スターター:まず、加熱殺菌した原料乳に乳酸菌(主にLactococcus属やLactobacillus属)とレンネット(凝乳酵素)を添加します。
  2. 凝固と脱水:レンネットにより乳タンパク質であるカゼインが凝固し、カード(凝乳)と呼ばれる固体状の塊が形成され、液状のホエイ(乳清)を取り除きます。
  3. 風味と食感の形成:乳酸菌発酵や熟成中は、酵素反応によって様々な風味化合物(有機酸、エステル、ケトン等)が生成されます。これらの化合物が、チーズ特有の多様な風味や食感を生み出します。
  4. 保存性:乳酸によるpH低下、凝固や圧搾等による脱水、ブラインによる加塩によって腐敗の原因となる他の微生物の増殖が抑制され、チーズの保存性が高まります。

多様なチーズと発酵例

  • フレッシュチーズ(モッツァレラ、リコッタ等):主に乳酸菌による発酵で凝固させ、通常熟成期間はないため穏やかな風味を持ち、水分量も多い傾向です。
  • 白カビチーズ(ブリー、カマンベール等):乳酸菌による発酵に加え、表面に白カビ(カマンベールチーズの場合は Penicillium camemberti)を繁殖させることで熟成させます。カビがタンパク質や脂肪を分解し、独特の風味と食感を生み出します。
  • 青カビチーズ(ゴルゴンゾーラ、ロックフォール等):乳酸菌による発酵後、内部に青カビ(Penicillium roqueforti 等)を意図的に繁殖させて熟成させます。カビが独特の風味と青い筋模様を作り出します。
  • セミハード・ハードチーズ(チェダー、ゴーダ、パルミジャーノ等):乳酸菌による発酵と凝固後、圧搾して水分を抜き、長期間熟成させます。熟成中に様々な酵素や微生物の働きにより、複雑な風味と硬質な食感が生まれます。
  • ウォッシュチーズ(エポワス、タレッジョ等):乳酸菌による発酵に加え、熟成中に塩水や特定の微生物(Brevibacterium linens 等)で表面を洗いながら熟成させます。これにより、独特の強い香りと風味が生まれます。

チーズ品質を左右する因子

チーズの発酵と熟成には、以下のような多くの要因が影響します。

  • 乳の種類:牛乳、水牛、山羊乳、羊乳等、乳の種類によって成分組成が異なります。
  • 微生物:スターターとして使用する乳酸菌や熟成時に活躍するカビの代謝能は菌株毎に異なります。
  • 熟成条件:温度、湿度、熟成期間等は微生物の代謝や酵素反応に影響します。

このように、微生物の働きを巧みに利用することで多種多様なチーズが作られています。

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