お茶の種類によってその意味合いとプロセスが異なります。大きく分けて、酸化発酵(広義の発酵)と微生物発酵(狭義の発酵)の2種類があります。
- 酸化発酵(広義の発酵):これは特に紅茶や烏龍茶の製造で行われるプロセスで、茶葉自身の持つ酵素(ポリフェノールオキシダーゼ等)が、空気中の酸素と反応して茶葉の成分を酸化させることを指します。
- 紅茶:摘採・萎凋・揉捻された茶葉を一定の温度・湿度の下で酸化させます。これにより、茶葉の色は緑から赤褐色に変化し、テアフラビンやテアルビジンといった紅茶特有のポリフェノール類が生成され、独特の香りと水色(すいしょく)が生まれます。
- 烏龍茶:紅茶と同様の酸化酵素反応を利用しますが、酸化の途中で加熱処理を行い、酸化を部分的に止めることで、緑茶と紅茶の中間的な風味と水色を持つお茶になります。
- 微生物発酵(狭義の発酵):こちらは、微生物の働きによって茶葉の成分が変化するプロセスで、主に後発酵茶と呼ばれるお茶の製造で行われます。
- プーアル茶(普洱茶):中国雲南省が原産の代表的な後発酵茶です。殺青・揉捻・乾燥させた茶葉を積み重ねて微生物(主に細菌、酵母、カビ等)の作用で数週間から数ヶ月、あるいは数年かけて発酵させます(渥堆:あくとん)。これにより、独特の土のような香りや、まろやかで深みのある味わい、濃い水色になります。
- 六堡茶(リュウバオチャ):広西チワン族自治区が原産の黒茶(後発酵茶)の一種で、プーアル茶と同様に微生物による発酵を経て作られます。
- 碁石茶(ごいしちゃ):日本(高知県)で作られる珍しい後発酵茶で、乳酸菌による発酵が行われるのが特徴で、独特の酸味を有します。
緑茶は、摘採後すぐに加熱処理を行い、酵素の働きを止めることで酸化発酵をさせないため、「不発酵茶」と呼ばれます。
このように、茶葉の発酵は、お茶の種類によって全く異なるプロセスであり、それぞれのお茶が持つ独特の風味、色、香りを作り出す上で重要な役割を果たしています。