麦芽と焙煎大麦(麦茶)の化合物比較表

麦芽と焙煎大麦は同じ大麦を原料としながらも、その製造工程(酵素の利用、熱処理の温度と時間)が異なるため、生成される風味化合物の種類、量、バランスが異なり、風味プロファイルも異なります。

麦芽と焙煎大麦の風味化合物比較表


麦芽焙煎大麦(麦茶)
製造方法発芽(酵素活性) + キルニング(乾燥・焙燥(温度・時間で多様な風味生成))高温での焙煎(酵素活性は失われ、強い熱分解が主)
ピラジン類トースト、ナッツ、パン、穀物などの香ばしさ。キルニングの温度が上がるほど生成量が増え、特にダークモルトで顕著。非常に強い焙煎香、香ばしさ、ナッツ、コーヒー、焦げたような香り。焙煎の主要な風味成分。例: アルキルピラジン類。
フラン類甘い、カラメル、パン、ビスケットのような香り。特にフラノン類は甘い香りに寄与。例: マルトールシクロテンフルフラールヒドロキシメチルフルフラールカラメル、甘い、または焦げた、木のような香り。メイラード反応やカラメル化によって生成。例: フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール、一部のフラノン類。
メラノイジン複雑な高分子で、麦芽香、パンのような風味、色、ボディ感に寄与。キルニング中に糖とアミノ酸のメイラード反応によって生成。麦芽の種類によって多様なタイプが存在。濃い色、強いロースト香、コーヒー、焦げたような風味、コク。高温焙煎で大量に生成され、麦茶の色と風味の主要因。
フェノール類スモーキーな風味(ピートモルトの場合)や、クローブのような風味(一部の酵母由来)。通常の大麦麦芽では目立たない。例: グアイアコールスモーキー、焼けたような、薬のような風味。大麦のリグニンなどの熱分解によって生成される可能性。例: グアイアコール、シリンゴール。
チアゾール類ナッツ、ロースト、硫黄のニュアンス。ロースト、ナッツ、または湿った土、カビのような香り。一部の硫黄化合物やアミン類と糖の反応で生成。例: 2-メチルチアゾール。
アミノ酸・ペプチド旨味(特にグルタミン酸など)、酵母の栄養源、ビールの泡持ち、ボディ感に寄与。糖化工程でタンパク質が酵素分解されて生成。抽出されるが、酵素分解はほとんどないため、遊離アミノ酸や特定のペプチドの量・種類は麦汁とは異なり、旨味への寄与も限定的。
タンニン渋味、収斂味。主に麦芽の殻(ハスク)から抽出されるポリフェノール類。醸造工程で過剰に抽出されると不快な風味の原因に。抽出されるが、麦茶の製造工程(焙煎と煮出し)では、麦芽の糖化工程とは異なる条件下で抽出されるため、風味への影響や量は異なる。
その他ラクトン類(メイプル、ココナッツ、または特定の条件下で異臭)、アルデヒド類(グリーン、草、あるいは熟成香)。アルデヒド類(焙煎による生成)、苦味成分(焙煎によって生成される非ホップ由来の苦味物質)。

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