ノンアルコールビールの低温殺菌(パスチャライゼーション)

ノンアルコールビール(アルコール度数1%未満)の低温殺菌(パスチャライゼーション)は、品質保持の観点から重要な工程です。アルコールによる防腐効果が低いため、微生物(酵母、細菌等)による腐敗(再発酵、オフフレーバーの発生、濁りの発生等)のリスクは高い傾向です。

パスチャライゼーションの目的

残存する微生物(酵母や細菌等)を死滅(酵素等も失活)させることで、製品の品質劣化(オフフレーバー、濁り、再発酵による破裂等)を防ぎ、賞味期限を延長させる。

パスチャライゼーションの原理

特定の温度(例:60〜65℃)で一定時間保持することで、微生物を死滅させます。商業的にはパスチャライゼーションユニット(PU)という指標で殺菌効果を管理します。

用意するもの

  • ボトリングされたノンアルコールビール
  • 大きめの鍋(ボトルが完全に浸る深さ)
  • 鍋底に敷くもの(ボトルが直接鍋底に触れないようにするため)
  • 液体用温度計

手順

  1. 瓶詰めと準備
  • ノンアルコールビールを瓶に詰めます。この際、瓶の口から数cmのヘッドスペース(空きスペース)を確保します。加熱によって液体が膨張するため、ヘッドスペースがなければ破裂の原因になります。
  • しっかりとキャップ(または王冠)をします。
  • 鍋の底に布巾や網などを敷きます。これは、加熱中に瓶が直接鍋底に触れて一点に熱が集中し、破損するのを防ぐためです。お湯に瓶をいれ、追加の加熱をしない場合は不要です。
  1. 瓶を鍋に入れる
  • 瓶を鍋の中に並べます。瓶同士がぶつからないように、また鍋の側面にも触れないように隙間を空けます。
  • 瓶の容積が鍋の容量に対し小さい場合は、例えば約70℃のお湯を調整した鍋に室温程度に戻した瓶を並べる方法も選択できます。
  1. 水を注ぎ、加熱開始
  • 瓶の液面よりも高くなるまで、鍋に水を注ぎます。この水は、常温またはぬるま湯から始めるのが理想です。冷たい瓶を熱湯に入れるのは避けてください。
  • 中火にかけるなどして、ゆっくりと加熱を開始します。
  1. 温度管理と保持
  • 鍋の水の温度を、温度計で常に監視します。
  • 目標温度:60℃〜65℃が一般的です。この範囲内で、温度が安定するまでゆっくりと加熱します。
  • 保持時間:目標温度に達したら、その温度を15分間〜20分間維持します。温度が下がりそうになったら火を少し強くし、上がりすぎたら火を弱めるなどして、一定の温度を保つようにします。
  • 例:60℃で20分、または65℃で15分などが目安。
  • この時間で、微生物はほぼ死滅すると考えられています。
  1. 冷却
  • 保持時間が経過したら、火を止めます。
  • 急激に冷やさず、鍋に入れたまま自然に冷めるのを待つか、または少しずつ冷たい水を追加していくなどして、ゆっくりと温度を下げていきます。 冷めるのに時間がかかりますが、瓶の破裂を防ぐために非常に重要です。
  • 触れるくらいまで冷めたら、瓶を鍋から取り出します。
  1. 保管
  • パスチャライズされたノンアルコールビールは、冷暗所で保管します。これにより、未殺菌のものよりもはるかに長く品質を保つことができます。

風味への影響

パスチャライゼーションは繊細な風味を損なう可能性がありますが、ノンアルコールビールの安定性を確保するためには、この工程がトレードオフとなります。温度および時間を適切に管理することで風味への影響を最小限に抑えることが重要です。

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