ベルジャンスタイルビールに使用される酵母は、スタイルを特徴づける風味を生み出す上で重要な要素です。その起源は中世の修道院醸造に遡り、自然発酵やオープンファーメンテーション(開放発酵槽)を通じて、多様な酵母株が培われてきました。
・トラピスト/アベイ(アビィ、アビー)
高発酵性と耐アルコール性を持ち、フルーティーなエステル(バナナやリンゴの香り)やスパイシーなフェノール(クローブや胡椒の香り)を生み出します。
・セゾン
セゾン酵母としてSaccharomyces cerevisiae var. diastaticusが採用されることが多く、高温発酵に強く、ドライな口当たりと爽やかな酸味、スパイス感を生み出す特徴があります。
・ヴィット
酵母が産生する穏やかなエステルによる適度なフルーツ感により、使用スパイスとの調和を図ります。
・ランビック
ランビックは空気中の野生酵母や乳酸菌による自然発酵が特徴です。特に、ブレタノマイセス酵母(Brettanomyces bruxellensisなど)は、酸味だけでなく馬小屋や干し草を思わせる複雑な香りを生み出します。また、ペディオコッカスやラクトバチルスなどの乳酸菌も酸味に寄与し、熟成によって独特かつ複雑な風味を形成します。