ホップの品種は、何世紀にもわたる栽培と育種の歴史の中で進化してきました。最初にホップがビール醸造に使われたのは中世ヨーロッパで、特にドイツやイギリスで栽培が発展しました。16世紀には、ホップがビールの防腐効果を持つことが広まり、ヨーロッパ全土で重要な作物となりました。
ヨーロッパでのホップ栽培の始動
19世紀になると、ホップ品種の育種が進み、ドイツではノーブルホップ(ハラタウ、ザーツ、シュパルターなど)が作出されました。これらのホップは、上品で繊細な香りを持ち、ラガービールの醸造に適しています。一方、イギリスでは、ファグルやゴールディングスといったホップが確立され、エールに適した品種が開発されました。これらの品種は穏やかな苦味とフローラルな香りが特徴です。
アメリカでの革新
20世紀になると、アメリカで新たなホップの品種改良が進みました。禁酒法が廃止された後、ビール産業が復活し、耐病性の高い品種が求められるようになりました。1970年代には、カスケードホップが登場し、柑橘系のアロマが特徴のホップとして人気を博しました。これがアメリカンクラフトビールの基盤となり、次々と新しい品種が開発されるきっかけとなりました。その後、シムコー、アマリロ、シトラ、モザイクなど、トロピカルフルーツや柑橘のような強烈なアロマを持つ品種が次々と誕生しました。
ニュージーランドとオーストラリアのホップの進化
ニュージーランドとオーストラリアも、近年ホップの生産地として注目されています。ニュージーランドでは、冷涼な気候と火山性土壌を活かし、独特なホップ品種を生み出してきました。代表的な品種にはネルソンソーヴィンやモチュエカ、ワイメアなどがあり、白ワインやトロピカルフルーツのようなアロマが特徴です。特にネルソンソーヴィンは、ソーヴィニヨン・ブランのような香りを持ち、Hazy IPAなどで人気があります。
オーストラリアでは、ホップの育種プログラムが進んでおり、ギャラクシーやヴィックシークレットといった品種が生まれました。ギャラクシーはパッションフルーツや柑橘のアロマが強く、ホップアロマを前面に出すクラフトビールに多く使われています。ヴィックシークレットは、トロピカルフルーツに加えて松や草のような香りを持ち、IPAやペールエールに適したホップです。
現代のホップ開発と未来
近年では、ホップの遺伝子解析が進み、病害耐性や気候適応性を高めた品種の開発が進められています。さらに、醸造家と農家が連携し、よりユニークなアロマ特性を持つホップが求められるようになりました。アメリカのエクスペリメンタルホップや、ニュージーランド・オーストラリアの新種ホップは今後も増えていくと考えられます。
ホップは単なる苦味の提供だけでなく、ビールの香りや味わいを大きく左右する重要な要素として進化を続けています。世界中のホップ生産地で新たな品種が開発され、これからも多様なフレーバーを持つビールが生まれることでしょう。