ビールの品質には、多くの化合物が関与しており、それぞれが風味、香り、口当たり、安定性に影響を与えます。以下に主要な化合物を紹介します。
1. アルコール類
主にエタノールが含まれますが、微量の高級アルコール(フーゼルアルコール)も存在し、複雑なフレーバーを生み出します。適量ならば芳醇、多すぎると刺激的な風味になります。
2. エステル類
主に酵母の発酵によって生成され、バナナ(酢酸イソアミル)やパイナップル(酢酸エチル)などのフルーティな香りをもたらします。特にクラシカルなエールビールではエステルが重要な役割を果たします。
3. フェノール類
クローブのような香りを持つ4-ビニルグアイアコール(4VG)などが代表的です。ヴァイツェンやセゾンなどのスタイルでは望ましいですが、過剰になると不快な薬品臭を生じることがあります。
4. ホップ由来の化合物
- α酸(アルファ酸):煮沸中にイソα酸へ変化し、苦味の主成分となります。
- フムロン類:苦味に寄与します。
- ホップオイル:リナロールやミルセンなどがあり、シトラスやフローラルな香りに寄与します。
5. テルペン類
ホップ由来の化合物で、リモネンやゲラニオールなどが含まれ、柑橘系やフローラルな香りを生み出します。特にIPAでは重要な役割を担います。
6. チオール類
ホップや麦芽由来の硫黄化合物で、グレープフルーツやカシスのようなトロピカルな香りを付与します。閾値が低く、微量でも強い影響を与える成分です。
7. 糖類とデキストリン
発酵によってアルコールに変化する糖(主に麦芽糖)と、未発酵のデキストリンがビールの甘味やボディ感に寄与します。
8. タンパク質とペプチド
泡持ちや口当たりに関与し、ビールの飲みごたえを決定します。一方、タンパク質は濁りの原因にもなり、スタイルによっては一長一短です。
9. ジアセチル
バターのような香りを持ち、低濃度ではまろやかさを与えますが、高濃度だとオフフレーバーになります。ラガービールでは低減させることが重要です。
これら化合物のバランス調整がビール品質のカギとなります。