アサヒスーパードライの再現

アサヒスーパードライのような、高度な品質管理と技術を用いて生産されているビールを再現することは極めて困難です。アサヒスーパードライは、特定の酵母株、精密な工程管理、厳密な品質管理等が組み合わさって実現されています。今回は「アサヒスーパードライのような、ドライでキレのあるクリアなラガービール」の再現を妄想します。

目指すべき特徴は「ドライ(低糖質)」「キレ(軽快な後味)」「ニュートラル(クリーンな風味)」とします。

  1. レシピ設計
  • モルト:主張が穏やかなモルト構成が基本で、ベースモルトはピルスナーモルトです。
  • 副原料:スーパードライの「ドライ」と「キレ」を実現するために、米やコーンスターチ等の使用が重要です。これにより、酵母がより発酵しやすい単純糖が増え、最終的な発酵度が高くなります。使用量はモルト全体の10〜30%程度が目安ですが、バランスが重要です。米を使用する場合、モルトとは別に「シリアルマッシュ」という特別なマッシング工程が通常は必要です。
  • ホップ:ホップのキャラクターは控えめにします。苦味はクリーンな性質を持つホップ(ドイツやチェコ産ノーブル系ホップ系等)を少量、煮沸の早い段階で投入します。アロマホップは非常に少量にするか、ほとんど使用しません。IBU(苦味単位)15〜25程度に抑えます。
  • :軟水が適していますが、必要に応じてミネラル(カルシウム等)の調整が必要です。
  1. マッシング(糖化)
  • 温度プログラム:高発酵度を目指すため、β-アミラーゼが働きやすい温度帯(例: 63〜65℃)を長めに取るステップマッシュを設けることで、酵母が発酵しやすい分子量の小さい糖をより多く生成させます。
  • シリアルマッシュ:米やコーンを使用する場合、そのままでは糖化されないため、一度煮沸して糊化させるシリアルマッシュ工程を別途行い、その後に主たる麦汁に加えて糖化を行います。
  • 酵素:酒税法上、製品への表示義務がないため、別途糖化酵素が使用されている可能性があります。
  1. 酵母
  • 酵母株:クリーンで高発酵度のラガー酵母(Saccharomyces pastorianus)を選択します。アサヒ社が使用している酵母株は流出を防ぐため厳格に管理されていますが、商業的に入手可能なラガー酵母の中にはジャパニーズラガーに適する株がいくつかあります。硫黄化合物やダイアセチル(ジアセチル)、アセトアルデヒドといったオフフレーバーをあまり生成しない性質を持つ株を選択します。
  • ピッチング量:投入酵母細胞数を通常よりやや多めにすることでエステルの産生を抑制し、よりニュートラルな仕上がりを狙います。
  1. 発酵管理
  • 温度:低温(8〜15℃程度)で長時間かけて発酵させます。正確により低温で発酵温度を制御することでエステル産生を抑制し、よりクリーンなフレーバーを目指します。
  • ダイアセチルレスト:主発酵の終盤、または終了後に温度を少し上げる期間(15〜20℃程度で1〜3日)を設けます。これにより、酵母が発酵中に生成したダイアセチル(バター様)やアセトアルデヒド(青リンゴの様)を分解し、クリーンなフレーバーになります。
  1. ラガーリング(低温熟成)
  • 発酵とダイアセチルレストの完了後、ビールを氷点に近い温度(0〜4℃)まで冷却し、数週間から数ヶ月間、低温で熟成させます。これにより、酵母やタンパク質が沈殿し、フレーバーが丸くなり、よりクリーンで洗練された味わいになります。長期間のラガーリングは、ドライでキレのあるラガーには必須の工程です。
  1. 清澄化
  • スーパードライの特徴である(外観も含め)圧倒的なクリア感を実現するためには、ラガーリングだけでは不十分な可能性があります。
  • 清澄剤:ラガーリング前に清澄剤(ゼラチン、アイシングラス等)を使用することで、酵母やタンパク質の沈殿を促進します。
  • ろ過:商業レベルのクリアさには酵母を除去可能な精密なろ過が必要となります。なお、アサヒビール社含む大手ビールメーカーは珪藻土ろ過等により酵母を完全にビールから除去することで、常温で長期保存可能な生ビールを実現すると同時に自社酵母株の流出を防いでいます。
  1. 炭酸ガス
  • スーパードライは高い炭酸ガス濃度が特徴です。ナチュラルカーボネーションやボトルコンディションによる瓶詰め・樽詰めでの炭酸付けも可能ですが、スーパードライ製品同様に強制的に炭酸ガスを溶解させる方が望ましいです。
  1. 品質管理
  • バッチごとのばらつきを最小限に抑え、オフフレーバーの発生を抑制するためには、厳格な温度・時間管理、pHチェック、比重測定、そしてテイスティングによる評価および記録が不可欠です。

再現の障壁

上述のように、スーパードライの再現には高度な技術と設備が必要です。特に、精密な温度管理システム、ろ過設備、高頻度の経時的品質管理体制は、小規模ブルワリーにとって大きなハードルです。したがって、小規模ブルワリーが、本物に近いスーパードライを再現することでさえ現実的には難しいですが、公開情報等を元にスーパードライの再現を妄想します。

アサヒスーパードライ風ジャパニーズドライラガー妄想レシピ(完成量 20リットル)

ターゲット

  • 初期比重(OG):1.046 – 1.048
  • 最終比重(FG):1.004 – 1.008 (高い発酵度)
  • アルコール度数(ABV):5.0% 程度
  • IBU (苦味):15 – 20
  • SRM/EBC (色):2 – 3(ペールストロー)
  • 炭酸ガスボリューム:2.6 – 2.8 Vol.

原材料

  • モルト
  • ピルスナーモルト:5.0 – 5.5 kg(全体の約 70-75%(注: 副原料とのバランスで調整))
  • 副原料
  • 米およびコーンフレーク:1.5 – 2.0 kg(全体の約 25-30%)
  • (注: 公表されている「米」「コーン」「スターチ」に対応。米が風味のクリーンさに寄与しやすいです。シリアルマッシュが必要な粒状の米を使うか、扱いやすいフレークを使うかは設備の制約によります。スターチは糖化効率を高める目的で加えられることがありますが、小規模ではフレークで代用することもあります。)
  • ホップ
  • マグナム(Magnum)または ザーツ(Saaz)または ハラタウ・トラディション (Hallertauer Tradition)等、クリーンな苦味のノーブルホップ系品種:10 – 15 g (α酸含量に応じて調整)- 煮沸開始時 (60分)
  • アロマホップ(同上の品種):0 – 5 g (煮沸終了間際、香りは最小限に)
  • 酵母
  • クリーンで高発酵度、オフフレーバー生成が少ないラガー酵母(Saccharomyces pastorianus)を採用する。極低レベルの硫黄臭等は典型的なラガーのニュアンスに必要かもしれず、オフフレーバーの産生量が極めて少ないLallemand NovaLagerの採用は適切でないかもしれない。
  • WLP885(Zurich Lager), WLP940 (Mexican Lager)
  • Wyeast WY2007 (Pilsen Lager)
  • Fermentis W34/70
  • Lallemand Diamond Lager
  • 適切なピッチング量(酵母数)が非常に重要。液体酵母ならスターター作成により事前に十分量以上の酵母数を確保。ドライ酵母なら推奨量よりやや多めに投入。
  • 硬度が非常に低い軟水。必要に応じてRO水を使用し、最低限のミネラル(カルシウム等)を添加してマッシングや酵母の健康に必要なレベルに調整する。

醸造プロセス

  1. 水の準備:軟水を用意し、必要に応じてミネラル調整。
  2. マッシング
  • シリアルマッシュ(米やコーンフレークを使う場合)
  • 米またはコーンフレークと、総モルトの約10-15%のピルスナーモルトを少量の水と混ぜる。
  • 温度を上げて糊化させる(例:65℃で保持、その後煮沸)。
  • 煮沸後、温度を下げてタンパク質休止温度(50-55℃)や糖化温度(63-65℃)で保持し、モルトの酵素で副原料のデンプンを分解(糖化)させる。
  • メインマッシュ
  • 残りのピルスナーモルトをマッシュタンに入れ、水を加えて20L程度にし、マッシングを開始。
  • ステップマッシュ推奨
  • プロテインレスト:50-55℃で15-20分(副原料を使う場合は重要)
  • 糖化(高発酵度狙い):63-65℃で60-90分( β-アミラーゼ至適温度)
  • 必要であれば、より高い温度帯(例: 68-70℃)で短時間(10-15分)保持し、α-アミラーゼも利用する。
  • 合流:シリアルマッシュの糖化が完了後、メインマッシュに投入、全体を63-65℃に保ち、糖化を完了させる。
  • マッシュアウト:76-78℃まで昇温し、酵素の働きを止める。
  • ロイタリング:麦汁(ウォート)をクリアに分離する。
  1. 煮沸
  • ロイタリングで得られた麦汁を煮沸釜に移しスパージングを行い、煮沸で蒸発すること前提に22L程度の清澄な麦汁を回収する。
  • 60-90分間煮沸。煮沸開始時に苦味付けホップを投入。
  • 煮沸終了10-15分前にアロマ用ホップを少量投入(投入不要かもしれない)し、ワールプール後、ペレットカスを巻き込まないようクーリングへ移る。
  1. クーリングと酸素添加
  • 麦汁を速やかにラガー酵母の発酵温度(8-15℃)まで冷却。
  • 健全な発酵のために、十分な酸素を麦汁に溶け込ませる(ドライイースト使用時は不要)。
  1. 酵母投入
  • 冷却された麦汁に、適切に準備したラガー酵母を高い細胞数で投入する。
  1. 主発酵
  • 8-15℃の低温で、安定した温度管理下で発酵させる。適時、麦汁比重もしくは重量変化から、発酵度を確認する。
  1. ダイアセチルレスト
  • 比重が最終比重に近づき、発酵が緩やかになったら、温度を15-20℃に昇温し、1〜3日間保持する。これにより、酵母がジアセチルなどのオフフレーバーを分解する。テイスティングでダイアセチルが感じられなくなるまで行う。
  1. コールドクラッシュ
  • ダイアセチル後、温度を0〜4℃まで冷却する。酵母やタンパク質の沈殿を促進。
  1. ラガーリング(低温熟成)
  • 0-4℃の低温で、数週間から数ヶ月間熟成させる。これにより、ビールのフレーバーが丸くなり、さらに酵母や濁り成分が沈殿し、クリーンさが増す。
  1. 清澄化・ろ過
  • ラガーリング終了後、必要に応じて清澄剤(ゼラチン等)を使用。
  • スーパードライレベルのクリアさには、ろ過が必要(小規模設備では難しい)。
  1. 炭酸ガス添加
  • ビールをパッケージ(樽または瓶)に移し、目標の炭酸ガスボリューム(2.6-2.8 Vol.)になるように強制的に炭酸ガスを注入する。

この妄想レシピをアサヒスーパードライ飲用時のお供と

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