ホップ炭酸水(ホップウォーター)の再現に関して、ホップペレットからのエキス/オイル調整、そして乳化剤の使用まで踏み込みます。BtoB製品には高度な抽出技術や乳化技術が用いられており、再現は難しいですが、その原理の理解と利用を試みます。
1. 水溶性成分抽出
ホップペレットからアロマ成分を抽出する場合、最も現実的な方法は「冷水浸漬」です。ホップの苦味成分(アルファ酸)の抽出を極力避け、揮発性の芳香成分(ホップオイルの主成分)やアロマ前駆物質を水中に溶け込ませます。
- 材料
- 水:100ml(浄水器を通した水道水、またはRO水)
- ホップペレット:5g〜10g
- 清潔な密閉容器
- 目の細かい濾過器(コーヒーフィルター、メッシュバッグ、フレンチプレス等)
- 手順
- ホップの投入:容器に水100mlとホップペレット5g〜10gを入れます。メッシュバッグを利用すると濾過が容易になります。
- 冷蔵庫で浸漬:蓋をしっかり閉め、冷蔵庫で24時間〜48時間浸漬します。
- 途中で数回、優しく容器を振ってホップを撹拌します。
- ホップの量は、ホップ品種や加工形態によって調整します。
- 濾過:浸漬後、ホップの固形分をコーヒーフィルター等で濾過します。液体をできるだけクリアにすることで、ホップ片由来の青臭さや濁りを最小限に抑えられます。
- 使用方法:作成した濃縮液を、炭酸水500mlあたり小さじ1/2〜1杯(約2.5ml〜5ml)程度から加え、好みの香りの強さに希釈します。
2. 疎水性成分抽出
IPAのメインのアロマ成分であるテルペン類は疎水性のため、水を溶媒としての抽出は非効率的です。テルペン類含むオイル成分の抽出方法について考察します。
- ホップオイル(精油)の抽出方法
- 水蒸気蒸留法:ホップに水蒸気を吹き込み、芳香成分を揮発させて冷却・凝縮し、水と油(ホップオイル)に分離する方法。蒸留装置が必要です。
- 超臨界CO₂抽出法:高圧・低温の二酸化炭素を溶媒としてホップのオイル成分を抽出する方法。専用の設備が必要です。
3. 疎水性成分の乳化
ホップオイルは水に溶けないため、乳化剤の作用によって水中に分散させる必要があります。
前提:ホップオイルを調整可能な場合
- 材料
- ホップオイル(例:0.05〜0.20m/500ml炭酸水)
- 食品グレードの乳化剤例
- ポリソルベート20or60:精油の乳化に適するとされています。
- アラビアガム:天然(合成工程を経ない)とされますが、ポリソルベートと比較し乳化力が弱く、多めに必要になる可能性があります。
- キサンタンガム:乳化剤ではないですが、液体にわずかな粘性を与え、油滴の分離を遅らせる効果(乳化安定剤としての役割)を有するとされています。
- 水:炭酸水を作るための水
- 強力な撹拌ツール:ハンドブレンダー、小型のフードプロセッサー、またはシェイカー。
- 手順
- 乳化剤溶液の準備:少量(例: 20ml〜50ml)の水に乳化剤を溶かします。ポリソルベートならごく少量(ホップオイル量の数倍〜10倍程度)、アラビアガムなら多め(ホップオイル量の10〜20倍程度)を目安にします。
- ホップオイルと乳化剤の混合:乳化剤溶液にホップオイルを加え、強力に撹拌します。
- 炭酸水との混和:調整した乳化ホップオイル液を、炭酸水に少量ずつ加えながら、全体に均一に分散させます。
再現障壁
- ホップオイルの入手:一般消費者向けに食用グレードのホップオイルが少量で入手できる機会は非常に限られています。アロマオイルとして売られているものは食品用ではないため、絶対に使用しないでください。
- 乳化の安定性:家庭用ミキサーでは、プロが使うホモジナイザーのような微細な乳化は難しく、時間が経つと乳化が壊れて分離する可能性があります。
- 乳化剤の風味影響:乳化剤によっては、製品の風味を損なう可能性があります。
- 安全性と添加量:ホップオイルも乳化剤も高濃度であり、食品添加物としての使用量基準や安全性を理解せずに使用すると危険です。食用として認可された製品の指定された使用量を守ることが必須です。
結論と推奨
市販のホップ炭酸水やホップウォーターのようなクリアで均一なホップ炭酸水を家庭で再現する場合の最も現実的な方法は冷水浸漬(上記1)です。市販のホップ炭酸水(ホップウォーター)に限りなく近づけるためには乳化ホップオイル(香料)の調整が鍵と考えられます。