マルトデキストリンと難消化性デキストリンの使い分け

ノンアルコールビールや高比重IPAにおいて、ボディ(コク、口当たり)を付与する目的でマルトデキストリンや難消化性デキストリンがよく使用されますが、それぞれが最終的な飲料に与える風味と口当たりには明確な違いがあります。

マルトデキストリン

  • 組成:デンプン(主にコーンスターチやジャガイモデンプン)を加水分解して作られるデキストロース当量(DE値)が10〜20程度の多糖類です。
  • 発酵性:酵母によってほとんど発酵されません。そのため、発酵後の残糖として飲料中に残存します。一部のセゾンイースト等(Saccharomyces cerevisiae var. diastaticus)は資化可能なため注意が必要です。

風味への影響

  1. ニュートラルな甘みとボディ
  • 甘み:わずかな甘みを感じることはありますが、砂糖のような強い甘さはありません。非常にニュートラルで、他の風味を邪魔しません。
  • ボディ:口当たりに「重み」「とろみ」「厚み」を与え、液体にしっかりとしたボディとコクをもたらします。

使用される飲料

  • IPA(特にHazy IPA):口当たりの滑らかさ、ボディを出すために使用されることがあります。
  • スタウト/ポーター:コクと重厚感に寄与します。

難消化性デキストリン

  • 組成:デンプンを焙焼し、アミラーゼで加水分解した後に精製される水溶性食物繊維の一種です。構造が複雑で、ヒトの消化酵素ではほとんど分解されません。
  • 発酵性:酵母によって発酵されません。消化酵素でも分解されないため、摂取してもカロリーになりにくいという特性があります。

風味への影響

  1. 極めてニュートラルな風味と、すっきりとしたボディ
  • 甘み:ほぼ無味無臭であり、甘みはほとんど感じられません。
  • ボディ:マルトデキストリンと同様にボディや口当たりを付与しますが、後味に粘性が残りにくい傾向があります。
  1. 機能性表示:「食物繊維」としての機能性表示が可能です。これにより、健康志向の製品で差別化を図ることができます。

使用される飲料

  • ノンアルコールビール(特に機能性表示食品):低カロリー(141kcal/100g)かつ血糖値上昇を穏やかにする効果を有するため、健康訴求をしたいノンアルコールビールでよく用いられます

最終飲料における風味の違い


マルトデキストリン難消化性デキストリン
甘みわずかに感じるほとんどない
ボディとろみ、厚み、コクすっきり、クリアな余韻
粘性やや感じる弱い
用途ボディを重視する高比重IPAヘルシー志向のノンアル

まとめ

  • 飲みごたえや大量のホップとのバランスにフォーカスしたIPAでは、マルトデキストリンが選択されます。
  • 「ゼロカロリー」「アルコールゼロ」といった罪悪感の軽減を狙ったノンアルコール飲料では、難消化性デキストリンが主要なボディ成分として選択されます。

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